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天国へ行く為に。

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朝井リョウ『何者』から就活について考える

こんにちは、死に起きです。

ついさっき、朝井リョウさんの『何者』という小説を読み終えました。

 

 

 

僕あまり読まないんですけどね、小説。

ただ『何者』が就職活動の話だっていうので、これは読もうと思ったのです。

僕なんか結局就活が嫌になって、どう活動すればよかったのかもわからなくて、どこかに就活をボロクソに叩いてくれるような作品なんかないかな~なんて思ってました。

もちろん、僕を納得させてくれるなら「就活は素晴らしい」っていう話でも良かったのですが。

 

あ、ちなみに朝井リョウさんは全く知りませんでした。今ちょっとウィキで調べています。

なんか時々耳にする『桐島、部活やめるってよ』の作者らしいですね。この作品も全く知らないんですが。

 

 

さて、『何者』の簡単な紹介をすると、

「就活生5人が就活するだけ」

の話です。

 

 

いやホントです。

簡単すぎとか言われそうですけど、ただ5人が就活しててTwitterしてるだけって感じです。

や、小説だから僕も5人が就活中に色んなドラマがあって、その中で成長していくようなものだと思ってたんですけど。

思いの外リアルすぎる。

もうホント普通なんですよ。

ただ逆にリアルだから良い。

就活未経験でどんなものか知りたいってい人がいれば結構オススメ。

 

 

さてじゃあ、普通だったら書くことなんにもないのかって言われたらそんなこともなく。

 

 

 

◆リアルだからものすごく読みやすい

一番話したいことはちょっと後回しで、先にこの小説の特徴。

さっきもTwitterという単語を出しましたけど、登場人物がTwitterをやっている描写があるとかじゃなく、ツイートが実際に載っけられてるの。アカウント名とIDも。

RICA KOBAYAKAWA @rika_0927 17分前

就活仲間のみんなで飲み会中!お互いに刺激しあってるなう。こうしてると、受験と就活は団体戦ってホントなんだと思う! #飲み最高 #就活がんばろ #って飲み過ぎ(笑)

Instagram……

これがそのまんま載ってる。う~ん、大学生って感じ。 

ちなみに僕はこういうタグつけまくってるツイートが大っ嫌いです。何の意味があるんだ一体。

 

こういう身近な描写があるから、読み手が想像しやすいんですよね。

その他、やはり就活の話なので ES(エントリーシート)、Webテスト、グルディス(グループディスカッション)等、本当にそこら辺の大学生が話していることが書かれている本って感じです。

 

 

◆意識高い系

・・・意識高い系って結構人によってニュアンスが変わると思うので具体的に書きますが

「知り合った人を全員『人脈』と呼ぶ」

「英字入りの名刺を態々作って社員に配る」

「バイトを『仕事』と言う」

「有名な人と話をすると『刺激的だった』と言う」

「『留学先の経験では~』『海外ボランティアでは~』という枕詞をつける」

 

こういう人たちが登場人物にいます。そして察しの通り、ちょっと叩かれてます。

ただ、本当にこれらのことは叩かれるべきことか…?これは恐らく、読み終わった人で考えが変わってくるところだと思います。

僕?僕はあまり好きじゃないかな。いや、僕の知らないところでそういうことやってる分にはいいんだけど、こういう人たちの話聞くのは結構疲れるから身近にいてほしくないね。

しかし往々にして社会に貢献するのは意識高い人(例えそれが「系」であっても)なので、すんごい嫌いってわけではないです。心の底で応援してます。

意識高い系という言葉に少し疑問を抱いていたり、興味がある人は読んでみるといいかもしれませんね。

 

 

◆内定はその人の全てを肯定する魔法

主人公の拓人とシェアハウスしている光太郎という元バンドマン。

最近の時事ネタもあってバンドマンはクソみたいな偏見ありますが、いやもしかしたら本当にそうかもしれませんが、この光太郎に関しては糞野郎ではないことを証言します。

この男はコミュニケーション能力が高く、バンドサークルでは後輩から慕われており、意識高い系の反応しづらい話にもしっかりと相槌を打ち、打ち続けるだけでなく所々で上手いこと躱したり…

面接でも「女性の面接官を笑わせたいと思って話したら選考通った」みたいなこと言う、ちょっとチャラけた印象のあるキャラです。

かと言って、決してバカではない。

まあコミュニケーション能力あるやつって大抵頭良いというか、察しがいいんだな。

そんな彼が出版社に内定を貰った後、このようなことを言いました。

 「内定って言葉、不思議だよな」

「誰でも知ってるでけえ商社とか、広告とかマスコミとか、そういうところの内定って、なんかまるでその人がまるごと肯定されてる感じじゃん」

「まるで全知全能の神みたいなさ。人生の師みたいなさ。さっきの後輩の子とか、俺が内定二つ持ってるってだけでそうなっちゃったもんな」

「俺思ったんだよね」

「俺って、ただ就活が得意なだけなんだって」

 「足が速いとか、サッカーが上手いとか、料理ができるとか字がうまいとかそういうのと同じレベルで、就活が得意なだけだったんだよ」

「なのに、就活がうまくいくと、まるでその人間まるごと超すげぇみたいに言われる。就活以外のことだってなんでもこなせる、みたいにさ。あれなんなんだろうな」

 

内定が得られても、納得がいっていない。

満足感、手触りが何もない。

たまたま、光太郎には現代の就活のシステムが得意だった。

もちろん、彼がこれまでに育んできたコミュニケーション能力というのは紛れも無く彼自身のものであり、これは肯定されるべきだ。

しかし、光太郎が持っていないものを持っている人も沢山いて、それが評価されないシステムは果たして正しい審査方法といえるのか。

 

実はこの時、主人公の拓人は内定を得ていなかった。

光太郎にしてみれば「なんで拓人に内定が出ないのかわからない」と。

 

もし、就活が点数制だったとして、それも会話とかでなく筆記試験だったとしよう。

光太郎が90点で、拓人が60点だったなら、落ちてもこんな考えをすることはなかっただろう。

就活が怖いのはこれで、「一体何で合否判定をしているのかわからない」ということが多々ある。

なんで俺が受かってあいつが受からないのか、この疑問が光太郎の頭をグルグルと回っていたんだね。

 

 

 

◆働く前から熱意のある就活生

同じく、光太郎の言葉。

光太郎は昼に、内定が出た企業の内定者と人事部で食事会をした。

 「なんかみんなさ、すげえ考えてんの。これからの出版業界のこととか、どういう企画やりたいとか、すげえ熱く語れんの、すでに。」

「俺さ、就活って内定でたら終わりって思ってたけど、ちげえわ」

「俺、今日あった同期と、今日行った会社でずっとずっと働くんだよな」

 

「就活は終わったけど、俺、何にもなれた気がしねえ」

自分は就活が得意なだけであり、彼らのように立派な考えがあって入れたわけではない。

もし立派な考えがあって内定を得たなら満足感も得られただろうが…

自分は結局何者にもなれず、内定という結果だけが残った。 

 

 

 

・・・・・・・これねぇ~~~………

僕が一番…いっちばん就活で謎な部分なんだよ。

光太郎は「内定が出たけどなにも考えを持っていない自分」をすごい恥じているようだが、僕は「決して恥じることはないッッ!!!」と大声で励ましてやりたいところだ。

 

他の内定者は、企画や業界について考えを持っている。

きっと面接でもその考えを披露して人事に認められたのだろう。

でもさぁ、その考えって、結局素人の考えなんだよ。

もし彼らが、以前何らかの仕事で出版の企画というものをやったならまだわかる。

しかしもしやってなくって企画がどうの話してるなら、それはただの妄想だとしか言いようがないと僕は思う。

 

企画って簡単にできるものではないっていうのはだれでも納得だと思う。

だって現職の人でさえ、企画して全てが通るわけではないのに、まだ働いてもいない奴が企画だの業界だのって…

 

仕事って本当にやってみないとわからないものでしょ?

バイトとか、想像してたのと違うって当たり前にあったよ。

それをさもわかったかのような口調で言うのって、そしてそれを評価基準としている就活って、本当によくわからない。

 

多分、内定者の彼らが、就活中に温めていた企画を新入社員として提出したところで、たたっ返されるのがオチだと思ってしまう。

 

 

◆私達は何者にもなれない

自分の名刺を作り、インターンや海外ボランティアに精を出す小早川理香。作中では自分の意識が高いことをひけらかす描写が多く見られた。

拓人は彼女を見て、少し馬鹿にしていたところがあった。

しかし彼女に言わせれば、そうやって観察者ぶって何もしない拓人こそ分かっていないと言う。

 

「自分が笑われていることだってわかってるのに、名刺作ったりしてるのはなんでだと思う?」

「それ以外に私に残された道なんてないからだよ」

「自分は自分にしかなれないんだよ。だって、留学したってインターンしたってボランティアしたって、私は全然変わらなかったもん」

「だけどこの姿で足掻くしかないじゃん」

「だから私は誰にどれだけ笑われたってインターンも海外ボランティアもアピールするし、キャリアセンターにだって通うし自分の名刺だって配る。カッコ悪い姿のまま、がむしゃらにあがく。その方法から逃げてしまったらもう、他に選択肢なんてないんだから。

 

これ読んだ時さあ…俺この子「かわいそうだなぁ」って思って。

一言で言うと、「人に認められることにがんじがらめにされている」。

でもこれは彼女が悪いわけじゃなくて、やっぱり就活が悪い。本当に就活が悪い。

 

上記の引用見るとわかると思うんだけど、彼女、全て人に認められるために行動している。

ボランティアも「人を助けたいから」とかでなく、「人を助けたことによって人に認められるからやってるんだよね。

僕は、最も健全な行動指針というのは「行動自体が目的」になっているものだと思っている。

親に認められたいからテストで高得点を取るのではなく、ただ高得点を取ることが楽しいからが最も正しい。

高得点を取ることで内申点を良くするという目的が会った場合、これはやはり最善とはいえない。

ただし悪くはない。親に褒められることや志望校に通うことが目的で勉強を頑張るのはいいことの部類に入る。

ただ、最良なのは、行動自体が目的であるということ。

これは少し長くなるので、また別の記事に書くことにしますが…。

 

ともかく、小早川理香のやっていることはその最善から程遠い場所にいる。

就活のため、人事に認められるために行う善行。

………たぶんね、理香も元々はこういうひけらかす人間じゃなかったと思うんだ。

意識高い系じゃなかった。

 

意識高い系っていうのは、自分のことを必要以上にアピール(自慢)する人のことを指すよね。

でもさ、就活でやらされていることって「自分のことを必要以上にアピール(自慢)する」ってことなんだよね。

つまり、就活に必死な人間は自然と意識高い系に見えちゃうんだよ。

 

それでも内定取るためだから、人事に評価のいいことやって、あがいて、媚び売って、どうにかしなきゃいけない。

自分が本心ではやろうと思ってなかったこともやって、それやっても結局何も変わらなくて、でもそれをやったってことを人事に必死にアピールして……

 

まあ正直、理香のやり方はがむしゃら過ぎたとは思うよ。光太郎みたいに、要領が良くない奴なんだと思う。

それでも頑張って、その結果意識高い系と………

 

これって、善と偽善の議論に似ていないか?

 

理香の行動は、就活のため、人から認められるために行ったものである。

しかし、ボランティアしたってはボランティアだ、善行には変わりない。

さて、彼女は善者か偽善者か。

 

上記で彼女が言った言葉を言い換えると、

「私のやってることは偽善だけど、あなたはなにも善行してないじゃない。ならない善よりやる偽善じゃない?」

ということになるのかな。

 

でもさあ…

こんな自分の心に嘘つかせて行動させる就活ってやっぱおかしいと思うわ俺…

 

 

 

◆おわりに

まあまとめとしては、「大学生の友達にこの一年の就活の話聞かされた」って感じでしたね。

面白いとか面白くないとかじゃないかな。

って思ったらこれ直木賞受賞してんの?

俺賞貰った小説読んだの多分初めてだけど…そこまで?ちょっとよくわからない。

まあとくに絶賛も貶しもしないので、知り合いの就活の話が聞きたいなって人は読んでみてはどうでしょうか。

 

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。

 

死に起き